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『コンセプトの教科書』⑧ コンセプトは形にして初めて意味がある 18/30
良いコンセプトができると、
少し仕事が終わったような気分になる。
しかし、本当は
そこからが始まり
なのだと思う。
どんなに美しい言葉でも、完成した建物が普通なら意味がない。
コンセプトは、
図面や素材、照明、家具、運営方法にまで翻訳されて
初めて価値になる。
たとえば、「一人の時間が整う住まい」というコンセプトをつくったとする。
では、
それは空間では何を意味するのか。

玄関を開けた瞬間に生活全体が見えないほうがよいかもしれない。
照明も、部屋全体を均一に明るくするより、
必要なところに小さな光があるほうが落ち着くかもしれない。
収納も量を競うのではなく、物が自然に片づき、視界が整うことが重要かもしれない。
こうやって一つずつ考えていくと、抽象的だった言葉が少しずつ建築になっていく。

私はこの作業を
「翻訳」に近い
と感じた。
言葉を空間へ翻訳する。
価値を設備へ翻訳する。
考え方を体験へ翻訳する。
企画者の仕事は、格好いい言葉を考えることではなく、
この翻訳を最後までやり切ることなのだと思う。
しかも翻訳は一方向ではない。
実際に図面を描いてみると、
「このコンセプトではうまくいかない」と気づくこともある。
そこで再び言葉に戻り、考え直す。

つまり、抽象から具体へ一度降りるのではなく、
抽象と具体の間を何度も往復する。
私はここに、企画と設計が分離できない理由があると思った。
言葉だけでも駄目。
物だけでも駄目。
考え方と形が結びついたときに、
初めて「その企画らしい空間」が生まれる。
