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決算書×ビジネスモデル大全⑤ ニトリと無印の違い 15/30
雑貨の優良
なチェーン店といえば
ニトリと
無印良品
どちらも
個性的ででも一般の人が日常使いするには
最適の雑貨から家具まで取り揃えている会社
外側から見るとどちらも絶好調のようにみえるが
すうじでみてみるとどうなのだろう?
際立った差が出るのは
「棚卸資産回転期間」
つまり
どれくらい在庫が速くさばけて
開店するか
棚卸資産在庫回転期間=棚卸資産÷平均日商
在庫が売上高の何日分に相当するかを表す数字
2010年2月期以降
良品計画の在庫回転率が長期化する
その一方で
ニトリの棚卸資産回転期間は
一定水準をキープしている
どこで差がついたのか?
無印良品のBSを見ると
流動資産 2690億円
そのうち 現預金が1060億円なので
棚卸資産は売上高の86日分
ちなみに自己資本比率は55%
PLは
売上 4540億
原価 2310億(原価率51%)
販売費1800億 (販売比率40%)
営業利益 420億 (営業利益率9%)
一方ニトリはどうかというと
2022年2月期
BSは有形固定資産が多いのが特徴
5600億円
国内店舗
物流センター
その他 ベトナムに保有する家具製造工場
など
を賃貸でなく 所有している
資産が多い
総資産に占める割合は57%
流動資産 2780億
現預金 1300億
棚卸資産 860億
これは
売上に対する比率として
売上高の39日分
良品計画の半分以下
また無形固定資産が
380億あるが
これは最近買収した島忠の
「のれん代が220億含まれる」
PLは
売上高 8120億円
原価 360億円(原価率48%)
販売費 2880億円(販売率35%)
営業利益 1380億円(営業利益率17%)
販売率で5ポイント原価率で3ポイント
良品計画を上回っている
結果 営業利益率は約2倍
島忠買収後もニトリ全体としての営業利益率は
遜色ない高い水準
おおむね買収は上手くいったといえる
その差は果たしてどうやって生まれたのか?
原価率の差の理由
理由1 売上高の規模でニトリが約1.8倍
理由2 ニトリは家具の製造を一部自社工場
無印は生産工場は保有しない
⇒商品製造はすべてサプライヤーに依存
では販売費の5ポイントの差は
理由1 良品計画は借地借家料の割合が高い
理由2 良品計画は運送運搬費が販売費に占める割合が高い
何故 ニトリの在庫回転期間が短いのか?
実は2010年ころまでは両社の回転率の差はそれほど大きくなかった
⇒30~35日程度
つまり
ニトリは維持したのに
無印は在庫期間が長くなった
原因は
無印良品のアイテム数の拡大(それは売上規模を拡大させるため)
結果在庫管理が難しく複雑になったことが原因と考えられる
もう一つあるのは売り上げ規模拡大のため
⇒主力商品の価格引き下げを継続的に
⇒発注ロットが大きくなる⇒在庫が増える
しかし
在庫管理はもともと
SPA企業にとっては難しい
逆に考えて
在庫期間を35日前後と維持している
ニトリにこそ秘密があるのでは?
⇒一つ考えられるのは
ニトリが
自社工場、自社物流拠点を保有しているので
きめ細かく発注生産が可能だという事
⇒そういう効率のいい体制を自前主義で築いてきたこと
売上規模の拡大と自社保有の工場、物流の一貫した体制が
効率アップにつながり
利益率拡大維持につながったニトリに対し
無印良品は
売上規模の拡大により
むしろ管理が複雑になり
生産性悪化を招いたことが
両社の勝敗を分けたことになる
どう有利な体制を整えるか
何を自前にして
何をアウトソーシングするか
そのためには売り上げの規模はどの程度が最適か
だからどうするか
数字を元に経営するかどうか
そのあたりで差が出る